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この記事で分かること
商社への新卒入社を検討中で、離職率の実態や早期退職のリスクを事前に把握しておきたい方に向けた記事です。
・総合商社と専門商社を分けた離職率の統計は公表されていません。確かめられるのは、商社が属する卸売業の大卒3年以内離職率26.4%(全産業31.2%・厚生労働省・令和5年3月卒)、丸紅の離職率4.9%、5大商社の平均勤続年数17.4〜18.3年の3つです・離職率が低い会社の特徴として、研修とフォロー、キャリアの相談の場、働き方の数字の公表、配属の希望を聞く仕組みが挙げられます(統計はありません)・辞める理由は忙しさ・社風・配属などさまざまです。入社前に公表値と社員の話で確かめておくと、入社後のギャップを小さくできます
本記事の倍率・通過率・比率について
選考倍率、書類選考・面接の通過率、離職率、育児休業取得率などの数値のうち、企業や公的機関が公表しているものは出典を明記しています。出典の記載がないものは、著者が商社30年以上(うち人事部で新卒採用・中途採用の面接官を経験)で見てきた実感と、転職支援サービス各社が公開している情報をもとにした目安であり、公式な統計ではありません。企業・部門・年度によって変動します。
はじめに
「商社に入社したいけど、すぐ辞める人が多いって本当?」「新卒で商社に入っても続けられるか不安…」新卒で商社に入社して後悔する人の特徴と対策を事前に確認することで、後悔のないキャリア選択につながります。
すでに入社して辞めたいと感じている方は、新卒で商社を辞めたいと感じたらの判断基準と次のステップを参考にしてください。
商社は年収が高い一方で、「激務」「すぐ辞める人が多い」という話も耳にします。この記事では、新卒の離職率について公表されている数字だけを先に並べ、そのうえで、辞める理由と、入社前に確かめられることを整理します。
私は総合商社で30年以上働いており、人事部で新卒・中途の面接官をしていた時期もあります。ただ、離職率は総合商社と専門商社を分けた数字が公表されておらず、個社の数字も一部に限られるので、私が見聞きした話は「実感」として分けて書きます。
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商社の新卒離職率の実態とは

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」(令和5年3月卒業者・2026年10月23日公表)によると、大学卒の3年以内離職率は全産業で31.2%です(前の年の令和4年3月卒は33.8%)。
およそ3人に1人が3年以内に最初の会社を辞めている計算です。
先にはっきりさせておくと、「総合商社は何%、専門商社は何%」という形で分けた統計は存在しません。公表されているのは産業単位の数字と、一部の会社が自社で出している数字だけです。
商社は日本標準産業分類では卸売業に入ります。同じ調査の卸売業の3年以内離職率は26.4%(前の年は30.0%)で、全産業の31.2%より4.8ポイント低い水準でした。
個社の数字を出しているところもあります。丸紅はサステナビリティデータで離職率4.9%を公表しています(外部保証つき)。ただしこれは全社員の年間離職率で、新卒3年以内の割合とは別の数え方です。5大商社の平均勤続年数が17.4〜18.3年である点(2026年3月期の有価証券報告書)も、あわせて見ておく材料になります。
専門商社についても、業態を分けた公表統計はありません。
離職率の数字には、前向きな理由で辞めた人も含まれます。海外の大学院への進学、家業を継ぐ、別の業界での挑戦など、理由は人によって違うので、数字が高い会社がそのまま働きにくい会社とは限りません。
新卒の定着率が年ごとにどう変わってきたかを公表している商社は少なく、増えているか減っているかは数字では確かめられません。
総合商社と専門商社の新卒離職率を比較

商社は大きく「総合商社」と「専門商社」に分かれ、扱う商材の幅や会社の規模が違います。離職率も違うと言われますが、前の章のとおり、分けた統計はありません。
総合商社は一般に、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日の7社を指すことが多く、このうち豊田通商と双日を除く5社を「5大商社」と呼びます。
数字で手元にあるのは卸売業全体の26.4%と、丸紅が自社で出している離職率4.9%(全社員の年間離職率・外部保証つき)、そして5大商社の平均勤続年数17.4〜18.3年だけです。
平均年齢42歳前後で平均勤続が17〜18年なので、長く在籍する人が多いことは読み取れます(中途入社の人も含んだ数字です)。
総合商社で長く勤める人が多い理由としてよく挙げられるのは、年収の高さと、入社後の研修や異動で仕事の幅を広げられることです。
5大商社が有価証券報告書で公表している平均年間給与は1,784万〜2,113万円(平均年齢42歳前後)で、1年目は公表初任給(月33.5万〜36万円)を起点に、私が見てきた範囲では500万〜610万円、入社4〜7年目で800万〜1,200万円が目安です。
研修の期間やおおまかな中身は各社の採用ページに載っていますが、異動の細かい運用は公表されていないので、説明会や面接の逆質問で聞いてみてください。
専門商社は、鉄鋼・化学品・食品など特定の分野に絞った商社です。会社の規模も年収も幅が大きく、まとめて一つの傾向では語れません。
上場している専門商社14社の平均年間給与は943万円(平均年齢40.6歳)で、上は長瀬産業1,190万円、下は山善802万円です(2026年3月期 有価証券報告書)。総合商社の下限である双日1,257万円を上回る専門商社はありませんが、専門商社の上位は総合商社の下位に近い水準です。
専門商社は扱う分野が絞られるぶん専門性を深めやすい一方、異動の選択肢は総合商社より少ないことが多いと言われます(私は専門商社に勤めたことがないので、内側は分かりません)。どちらが合うかは、年収・仕事の幅・働き方のどれを重く見るかで変わります。
本記事の年収データについて
企業別の平均年収は、各社の2026年3月期 有価証券報告書に記載された「平均年間給与」に基づきます。年代別・年次別・役職別の金額は、どの商社も公表しておらず、有価証券報告書や公的統計から計算で出せるものでもありません。本記事に出てくるこれらの金額は、著者が商社30年以上で見てきた範囲の目安です。実際の金額は部門・評価・業績連動賞与によって上下します。
商社で新卒が離職する主な理由

新卒が辞める理由は人によって違いますが、私が見聞きした範囲では、次のような型に分けられます。理由ごとの割合を公表している商社はありません。
①入社前のイメージより忙しい:海外との時差がある仕事、急な出張、決算や大型案件の前など、忙しい時期があります。公表されている月平均の残業時間は約10〜28時間ですが、部署と時期によって差があります。
②社風が合わない:上下関係や付き合いの濃さは、会社や部署によって違います。説明会やOB・OG訪問で、複数の社員から話を聞いて確かめるのが確実です。
③希望の仕事ができない:配属は本人の希望どおりになるとは限らず、若手のうちは補助的な仕事も多くなります。配属の決め方は会社ごとに違います。
④専門性が身につくか不安になる:総合商社は異動で幅広く経験する面があり、早くから一つの分野を深めたい人には合わないことがあります。
⑤海外勤務を受け止めきれない:海外経験の時期を公表しているのは三菱商事の1社だけで、「原則として入社8年目までに全職員に海外経験を積ませています」としています。家族の事情などで海外勤務が難しくなり、退職を選ぶ人もいます。
⑥心身の不調:忙しさやプレッシャーから体調を崩し、健康を優先して辞める人もいます。相談窓口や産業医などの制度は、各社の採用ページや統合報告書で確かめられます。
⑦前向きな転身:大学院への進学、起業、別の業界での挑戦など、商社での経験を生かして次へ進む人もいます。
「離職率が高い=悪い会社」とは限らないので、理由の中身まで見ることが大切です。
新卒で商社に入社して離職率が低い企業の特徴

離職率が低い会社の特徴としてよく挙げられるのは、次の4つです。どれも統計で裏づけられた話ではないので、入社前に確かめる項目として読んでください。
①研修とフォローがある:入社後の研修や、配属後の指導の仕組みです。採用ページの「研修制度」「人材育成」の欄で確かめられます。
②キャリアの相談の場がある:上司との面談や、異動の希望を伝える仕組みです。中身は会社ごとに違うので、説明会や面接の逆質問で聞いてみてください。なお、何年目でどの役職に上がるかを公表している商社はありません。
③働き方の数字を公表している:残業時間、有給休暇の取得率、育児休業の取得率などです。統合報告書やESGデータに載っています。
④配属の希望を聞く仕組みがある:配属面談や希望の申告の仕組みです。たとえば住友商事は、内々定の時点で配属を約束する「WILL選考」を、2025年4月入社の新卒採用から導入しています。
年収の高さも定着の理由に挙げられますが、賞与は業績に連動するので、年によって上下します。
商社の新卒離職率が高い企業に共通する傾向

逆に、人が辞めやすい会社の傾向としてよく言われるのは、長時間労働が当たり前になっている、指導が放任になっている、評価の基準が見えない、人が辞めて残った人の負担が増えている、といったものです。これも統計があるわけではありません。
長時間労働かどうかを見る材料として、5大商社の公表値を並べます。月平均の残業時間は、三菱商事11.4時間(2025年度・法定8時間を超える部分)、三井物産28.4時間(26/3期・本店および国内支社の非管理職)、伊藤忠商事約10時間(2025年度・法定8時間を超える部分)、住友商事9時間51分(2025年度)、丸紅16.7時間(2026年3月期・単体)で、何をどう数えるかが会社ごとに違います。また、部署や時期によっては平均よりかなり長く働く時期もある、というのが私が見てきた範囲での実感です。休日出勤も同じです。
ハラスメントへの対応も、会社によって差が出るところです。相談窓口や研修の有無は、統合報告書や採用ページで確かめられます。
こうした傾向は外からは見えにくいので、説明会やOB・OG訪問で、複数の社員に「忙しい時期はいつか」「若手の仕事は何か」「異動の希望はどう伝えるか」を聞いてみてください。答えが具体的かどうかが、判断の材料になります。
新卒入社後に商社で長く働き続けるための心構え

長く働けるかどうかは、会社選びだけでなく、入社後の向き合い方でも変わります。30年以上働いてきた立場から、大事だと思うことを5つに絞ります。
①忙しい時期があることを前提にしておく:入社前のイメージとの差が、辞める理由になりやすいからです。
②最初の数年は基礎づくりと考える:補助的な仕事にも、取引の流れや社内の動き方を覚える意味があります。
③分からないことは早めに聞く:一人で抱え込まないことが、仕事の面でも気持ちの面でも助けになります。
④語学は入社後も続ける:英語を使う頻度は部署で違いますが、海外の仕事に手を挙げるときの土台になります。
⑤辞めたくなったら、決める前に相談する:上司・先輩・人事・家族など、誰かに話すだけで状況が整理できることがあります。体調を崩しているときは、健康を最優先してください。
商社への転職と新卒入社、離職率の違い

まず新卒入社の側は、記事の前半で見たとおりです。確かめられるのは卸売業の大卒3年以内離職率26.4%(厚生労働省・令和5年3月卒)、丸紅が自社で出している離職率4.9%(全社員の年間離職率・外部保証つき)、5大商社の平均勤続年数までで、総合商社と専門商社を分けた数字はありません。
中途入社の人は新卒より辞めやすいと言われることがありますが、中途入社の人だけを取り出した離職率を公表している商社はなく、業界単位の統計もありません。
中途入社の人が辞める理由としてよく挙げられるのは、社風の違いに戸惑う、入社直後から結果を求められる、年収や仕事の範囲が思っていたものと違う、の3つです。
中途の年収は前職の経験や入社時の格付けで決まり、平均年間給与どおりになるとは限りません。条件面談で、提示額の内訳と配属先を書面で確かめてください。
一方で、中途で入る人は社会人経験があるぶん、忙しい場面に慣れているという面もあります。入社前に働き方を調べ、前職のやり方にこだわりすぎないことが、長く働くための助けになります。
まとめ:商社の新卒離職率を理解してキャリアを考えよう

商社の新卒離職率について公表されている数字は、卸売業の大卒3年以内離職率26.4%(全産業31.2%・厚生労働省・令和5年3月卒)、丸紅の離職率4.9%(全社員の年間離職率)、5大商社の平均勤続年数17.4〜18.3年(2026年3月期 有価証券報告書)です。総合商社と専門商社を分けた数字はありません。
辞める理由は、忙しさ、社風、配属、専門性への不安、海外勤務、体調、前向きな転身などさまざまです。離職率の数字だけでなく、理由の中身を見ることが大切です。
入社前には、残業時間・有給休暇・育児休業などの公表値を統合報告書やESGデータで見ておき、説明会やOB・OG訪問で働き方を具体的に聞いておくと、入社後のギャップを小さくできます。
商社には忙しい時期もありますが、異動や海外の仕事で経験の幅を広げられる面もあります。数字と社員の話の両方を材料に、自分に合う会社を選んでください。
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